リト・ノート
空いて来た列に並びがやがやと参拝を済ませ、女子がおみくじだと騒ぐのに付き合って、ばらけつつあった集団は再度神社裏で集合した。
「健吾、美雨見なかった?」
沙織に話しかけられるが、離れていたから知らない。
「はぐれた?」
「山根もいないんだよね。一緒にいるのかな」
沙織が健吾の反応を窺うように言う。こいつのこういうところが苦手、と今さら思う。言いたいことがあるならはっきり言えとイラッとするが、変に刺激して怒らせないようにするのは沙織の場合難しくはない。
「合流したけりゃ連絡して来るんじゃないの」
「そうかなぁ」
言葉の割に心配してるように見えないから、連絡が取れてるか山根と一緒にいるのを知ってるかどっちかだろう。
山根と2人でいるのは健吾にはさすがに面白くない展開だ。美雨がどこにいるかはなんとなくわかって、トイレに数人と行ってからさりげなく別れておみくじの近くまで戻った。
おみくじがたくさん結びつけてある隅っこの木に、美雨は1人で向き合っていた。山根と一緒じゃないんだ、と後ろから声をかける。
「何やってんだよ。みんなもう行ったぞ」
「あれ? みんなどっちに行ったの? はぐれちゃって今山根くんが探しに行ってくれたんだけど。沙織もいる?」
きょとんとした表情で周りを見回しながら美雨が言う。
「いるって言うか探してたよ。神社裏に集まってる。お前スマホは?」
「忘れちゃったの」
「こういう時にも使わないでなんのために持ってんの? 使いかたわかってる?」
「わかってるに決まってるでしょ。でも家に忘れちゃったの」
ムッとして言う様子に、リトといるときの方の美雨だなと思ってついにやけそうになるのを堪える。
「それ結べないならやってやろうか?」
「ううん、大吉だから持って帰ろうか考えてて」
美雨はいつも何か考えてはためらっているらしい。いいからやりたいようにやれよ、とリトじゃなくても言いたい気持ちはわかる。