リト・ノート
「リトに見せてやれば?」

「そうしようかな」という美雨の手からひょいと取り上げて、健吾も薄っぺらいおみくじを読んでみる。

大吉とは言うものの、各運勢は微妙にいいことが書いてない。《失せ物 焦らずともやがて出る 縁談 期待しないほど良し》といった感じだ。

「あー、これいらないかもな」

「いらないとか言わないでよ、大吉だよ」

迷っていたくせに美雨が口を尖らせた。

優柔不断なその様子を「どうしたいんだよ?」とわざと近くで目を覗き込んでからかうと、顔を赤らめて「リトに見せるってば」と睨み返しながら紙を取り返された。

その時、「なんかさあ」と恐ろしく近くで声がして振り向いた。美雨は小動物のようにびくっと飛び上がっている。

「おどかすなよ、山根」

「邪魔だった?」

「どっちが。沙織に言われて探しに来たんだよ。裏で集まってるから行けよ」

「羽鳥は?」

「俺はもう帰る。人多すぎてうざい。言っといて」

軽く告げて、階段の方へ歩き出した。

沙織の名前を出しておけば、美雨はすぐにみんなのところに戻るだろう。山根といたことにまた何か言われるんだろうが、山根が調子に乗ることはない気がする。


とりあえず初詣に来たのは正解だったなと考えて、ああそうかリトに言わせればこういう偶然も当然なのかと気づいた。会いたいと思ってたなら、はっきり願う必要もないってことだ。

冬休み早く終わらないかなと思いながら、健吾は長い石段を駆け下りた。

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