リト・ノート
「しばらく羽鳥の家に行ってみたらどうかな」と手をつないだままリトに提案した。リトの世話を羽鳥ができるならという条件付きで。
「私がいるからダメなのかもしれないでしょ?それに羽鳥の家でならたくさん練習できると思うから」
リトはチチチと鳴くだけで、羽鳥に向けて首を傾げる。特に異論はないのだろう。
「エサ・水・掃除ぐらいか。できると思うけど。いつまで?」
「話せるようになるまで」
美雨はリトに目を向けたままで答えた。
できるのかな俺、と羽鳥は天井を仰ぐ。
「君ができると言うならそうだし、そうでなければそれも真実だ」
冷たいようでいて、リトの言葉は「できる」方に近づいたように美雨には感じられた。
「お前、うち来る?」
リトに聞いたのかと思ったら、美雨に言ったようでうろたえる。
「それじゃ意味ないのか。リト、お前も本気出せよ」
「僕のせいではないと思うが、君の甘えた気持ちに喝を入れるにはいい策かもしれないな」