忘れてしまえ、私の心。


ふたりで盛り上がり始めたので家に入ろうとすると、


「ただいま。」


葵の声が聞こえた。


「「あら、おかえり~。」」


私は気がつかなかったふりをしてそのまま進む。


「望由!感じ悪いわよ。」


「気がつかなかっただけじゃない?望由ちゃんそんな子じゃないわよ。」


「気づいてると思ったんだけどな。」


ごめんなさい、葵のお母さん。私は感じの悪い子です。


母には気づかれたようだが、気にしない。


今日は、葵と一緒にいる時間を極力減らしたいのだ。


葵のお母さんがいると言っても、あの人料理はできないからどうせご飯は食べていくだろうし。


接触時間を減らすなら今会わないのがベストだ。


あんなことを考えた後だ。しかも、今日はあの日のことまで思い出してしまった。


もう一度ひとりになって今度こそ忘れなければ。





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