忘れてしまえ、私の心。
「不器用?」
なにを言ってるんだろう、葵は。
私は器用に生きてきたんだよ。誰にでも好かれるように。あなたによく見てもらえるように。頑張ってるね、って言ってもらえるように。
「そう。不器用。大切な物に対してな。」
大切な物に対して……
「由佳が好きなんだろ。だからいつも素直な癖に、由佳の前では言いたいこと心の中にしまうんだろ。」
そうなのかな。
「わかんない。でも、葵がそう思うんならそうなんじゃない?」
葵が言うなら間違いないだろう。葵が私のについて言ったことは今まで間違っていたことはない。
「なんだ、その他人事みたいな返事の仕方は。まあ、いいや。」