寵妃花伝 傲慢な皇帝陛下は新妻中毒
「……っ!」
口づけをしたのは生まれて初めてだった。
驚いた次の瞬間、今度は強引に唇が割られて、舌が口の中にねじ込まれる。
「ん、んっ……!」
いきなりのことに頭が真っ白になる藍香だが、足で敷布を蹴っても押さえつけられた体はびくともしない。それどころか口づけはどんどん過激さを増してゆき、竜樹の舌が藍香の口の中をなぶっていく。
気がつけば、掴まれていた手首は自由になっていた。だが竜樹は大きな両手でしっかりと藍香の頬を包み込むようにはさみ、深く口づけ始めた。
「なかなかよい反応だ……」
口づけの途中でささやいた、竜樹の声は熱を帯びていた。
次第に舌が絡み合う水音が強くなる。
(ああ、どうしよう……!)
といっても、藍香はされるがままで自分がどうこうすることもできない。その一方で戸惑いながらも、自分の体がどんどん熱を帯びていくのがわかる。
まるで自分の意志など関係なく、大きなうねりの中に体を放り込まれたような気がした。
(このまま流されてしまうのが、正しい作法なの?)
「ん、んんっ……」
藍香は絡みつく舌の愛撫を必死に受け止めながら、ギュッと目を閉じる。
やわらかい竜樹の舌が、藍香の舌を包み込み、なぞり、そして軽く、歯で噛む。
なにもかも刺激的で蕩(とろ)けそうだった。
(ああ、怖い……どうしよう……自分が自分でなくなるみたい……)
そうやって、竜樹の一方的な愛撫に身を任せていたのだが……突然、竜樹の大きな手が藍香の胸を掴んだ。
「きゃあっ……!」
とっさに悲鳴をあげ、竜樹の胸を激しく押し返していた。
(な、なに今の!)
藍香はひどく混乱していた。
胸に触れられた瞬間、頭から腰まで一直線にしびれが走った。いったいなにが起こったのかわからず、思わず突き飛ばしてしまった。