想いの行方

「お姉ちゃんは・・・今の私みたいになって、その後どうしたの?」
「あぁ 笑って でこピン しやがった」



姉らしい、と思う。
でもその余裕が羨ましくて憎らしい。
憎らしいと思う気持ちがさらに歪みを大きくする。



「アキラは本当はどうしたかったの?・・・お姉ちゃんに」
「ん?別に俺は何も・・・」
「してよ」
「は?」
「その時お姉ちゃんにしたかった事、今 私にして」
「バーカ・・・できるかよ、んな事」
「何よ?ここまでしておいてできないの?意外と意気地なしなんだ」



意気地なしのひと言でアキラの目の色がさっと変わった。
鋭さと強さが一際増した挑むような視線に射抜かれた。



「誰に向って言ってるのか解ってんのか?オマエ」
「今、他に誰がいるっていうの?」
「イイ度胸してるじゃねえの・・・似てるぜ?そういうとこも」
「似てない!」
「何だよ?!急にデカい声だすな」
「私は・・・お姉ちゃんなんかに負けてない・・・負けないもん、絶対」



へぇ、と口の端だけで笑ったアキラの
戯れの様に回されていた腕に力が篭った。



「そういうの 嫌いじゃないぜ?」
「アキ・・・」



名前さえ呼ばせないで見詰め合う5秒もないままで
突然重なった視線と唇。
この二つの熱を独り占めできるなら
私は姉の代わりでもいいとふと思ってしまった。
姉に負けたくないと強く思いながら
愚かにも全てを姉に倣ってもいいとさえ・・・



「ね・・・」
「ん?」
「今のキスは・・・どっちにしたの?お姉ちゃん?私?」



その答えは眩暈がするほどの熱くて深いキスで返された。



―― もうどっちでもいい。 お姉ちゃんでも私でも。 どうでも いい。



今のこの瞬間が全てで答えだ。後先なんて知らない。
今だけがあればいい。



「アキラ 好き  好きなの、アキ・・・ん」


言葉尻を飲み込んだアキラのキスに昂る思いが一層煽られた。
欲しくて欲しくて仕方なかったアキラの腕の中で
与えられ、求められる事の悦びに陶酔した。


意地や当てつけの上に成り立つ強さなど
本当の強さでは無いことくらいわかっている。
私を通して姉を見ているアキラにきっといつか耐えられなくなるだろう。
それでもいい。今は、その時までは、アキラは私のものだ。


アキラの背中に回した腕に力を込めた。





end

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