僕が小説を書くように
「……どこで」

「ん?」

「どこで、お知りになったんですか」

 彼女の瞳が、暗く揺れている。

「長い付き合いの編集者からきいた。
 アポを取っても平気ですっぽかして、ごめんの一言もないとか、
 やたらと原稿料をつり上げたがるとか、
 若い編集者に色目を使うとか」

 でも。

「僕は、それがどうも嘘くさいと思う。
 こうやって、きみを見てて、そう感じるんだ。
 きみが演技派女優だったら、こちらも騙されていることになるけど」

 伊達に、これまでたくさんの女と付き合ってきちゃいない。

「ただ、そういう噂がある以上、こちらもいろいろと考えなけりゃいけないんだ。
 出版界ってのは、意外と狭くてね。
 一度悪評が立つと、もみ消すのは簡単じゃないんだ」

「……理由が」

「うん?」

「理由が、あるんです。ちゃんとした……。
 きいて、いただけますか?」
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