僕が小説を書くように
「……ふぅ」

 僕は、いつものように窓辺に寄り、夕暮れを眺めた。
 
 彼女は、明るいうちに帰すことができた。
 また近いうちに連絡すると思う、と言ったら、顔を赤くしていた。

 昨今の女子学生にはない純粋さで、可愛らしかった。

 雑誌を手に取り、プロフィールを見る。

 発見があった。
 彼女は、今年新入生になったと言っていたが、年齢的にはアラサーなのだ。

 専門学校を出てから、ひきこもり、紆余曲折あったのだろう。

 とんとん拍子に人生の駒を進めてきたやつより、そういう人間のほうが、僕は好感が持てる。
 
 僕だって、最初から自分の書いたものに確固たる自信があったわけじゃない。
 正直言って、今だって手探りなのだ。

 ひきこもる、勇気も余裕もあったら、僕だってひきこもっていただろう。

 しかし、僕はなんだか、ときめいていた。

 なんだろう?
 彼女が年齢的には僕の基準をクリアしているからか?

 いや、やめておこう。
 そういう邪念は、昔はひんぱんに持っていたけれど、最近は出来る限り捨て置くようにしている。

 新しい才能に出会ったかもしれない、そのことに、ドキドキしているのだ。
 そう思っておこう。

「さて、どうするか……」
 あごを触りながらつぶやく。

 次の一手を、考えねば。
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