僕が小説を書くように
 僕は、研究室に詰めていることが多い。

 静かで考え事ができる空間だし、ときどき学生が遊びにやってくる。

「先生、いいオナニーネタないっすかね?」などと言って。

 その際は、すみやかにおすすめのエロDVDを教授する。

 そんな話でなくとも、わりと深刻な人生相談を持ちかけられることもある。

 時間の許す限り学生の話をきき、気が向けば飲みにつれ出してねぎらってやる。

 それが、講義以外での僕のスタンスだ。
 
 娘や息子ほど年齢の離れたやつらと交流するのは、なにかと勉強になる。

 彼らの考えをきくことで、新作のインスピレーションがわいたりもする。

 僕の若いころより、ガッツやハングリー精神に欠けているむきはあるが、愛すべき存在も多い。

「血反吐を吐くぐらい努力しなさい」
 しばしば、そう諭すしかないときもあるが……。

 口をきく学生の男女比は五分五分。

 まあ、話しやすいと思われて、好かれているほうなのだろう。

 昔は、もうちょっと女の子の比率が高かった気がする。

 少し寂しいが、まあ、過去は過去だ。

 今は、机に向かって大学の仕事をしている。

 誰も訪ねてこない、エアポケットみたいな時間帯があるのだ。

 そこに、彼女との予定をねじこんである。


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