僕が小説を書くように
「えっ……」

「料理も酒も、うまい店なら、いくらでも知ってるからさ。
 僕が嫌じゃなかったら、だけど」

「そんな、先生のことが嫌だなんて」

 ふるふるとかぶりを振る彼女。

「そうではなくて、わたし、お酒がのめないんです。
 内臓が悪くて、ドクターストップがかかっていて」

「なんだ、そんなこと」
 僕は拍子抜けした。

「ノンアルコールのカクテルが充実した店もあるよ。
 飲めない人は、珍しくはない」

 彼女は、困ってしまっているようだった。

「ま、気が向いたらでいいよ」

 押すばかりでは、嫌がられてしまう。
 僕は彼女を解放することにした。

 時間なら、いくらでもあるのだ。
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