僕が小説を書くように
「はーい! 開いてまーす!」

 声を張り上げると、彼女が入ってきた。
 僕を見るなり、目を真ん丸くして、叫ぶ。

「先生!」

 そりゃ驚くだろう。
 大の男が、エビみたいな恰好で、床に突っ伏しているんだから。

「大丈夫ですか?!」
「だ……大丈夫じゃない……ね」

 駆け寄ってくる彼女に、僕は汗ばんだ顔で笑顔をつくった。
 実際、声を出すだけでも、腰に響くのだ。

「たぶん、ぎっくり腰なんだ……あいててて」
 ひざまずいた彼女に説明する。

「それならとにかく、安静にしないといけませんね……」
 彼女は眉を寄せ、ベッドの上のタオルケットで即席の寝床をつくってくれた。

 おそるおそる、僕はそこに移動し、うつ伏せになる。

「冷やしたほうがいいんだと思うんですけど……冷シップとか、ありますか?」

「いや、ないと思う……」

「じゃ、私、薬局に行って買ってきます!」

 立ち上がりかけた彼女の腕を、とっさにつかんでいた。

「行かないでほしい」

 僕は、彼女を見上げた。

「ここにいて、ほしいんだ」


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