僕が小説を書くように
 パタン……。

 浴室に消えていく彼女を見ながら、僕は信じられない気持ちでいた。

「いいの? えっ、いいの?」
 頭の中が熱くなってくる。

 洗面所を使っている気配がして、もうなんだか、ただならない。

 百戦錬磨の自分が、ぐらついている。

「いいの?
 あんなことやこんなこと、しちゃうよ?」

 聞こえない程度の声で、彼女につぶやく。
 いや、どちらかというと、自分にか。

 わりと大胆だったのね、彼女……。

 耳をそばだてる。
 今、どんな格好なのかな?

「ていうか」
 突然、我に返る僕。

「俺、今、動けないじゃん!」

 無情な事実に叫んだら、腰の激痛と同時に浴室のドアが開いた。
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