僕が小説を書くように
「うん?」

「今日、ありがとうございました」

「いや、そんなこと……。
 俺のほうが、いろいろと世話になっちゃったじゃない」

「いいえ。
 先生が大変なときに、わたしのことを思い出してくださった。
 そのことが、とても嬉しかったんです」

 僕の中で、甘酸っぱいような気持ちが膨らんだ。

「先生だったら、ほかに助けてくれる女の人がいっぱいいるんだろうなって思ってたから」

「そんなことはないんだよ」

 だって、きみのことが一番に思い浮かんだんだから。
 そう思ったけど、照れくさくて言えなかった。



< 39 / 81 >

この作品をシェア

pagetop