僕が小説を書くように
「お願いします!」
 ブランドもののスーツが汚れてしまうが、構わない。
「やらせてください!」

「せ、先生?!」

 彼女が驚いて、かがんでくる。
 ついに俺がどうかしてしまったかと思っているのだろう。

「俺、大事にする! 大事にするから、だから……」

「やめてください、先生!」
 彼女が、僕の手を取った。
「人が見てます!」

「かかったな」
「えっ?」

 僕は、にやりと笑うと、彼女を引き寄せて、路面にひざまずいたまま、キスをした。
< 49 / 81 >

この作品をシェア

pagetop