僕が小説を書くように
 第一回目の講義が終わった。

 学生たちは素早く移動を始める。
 次の講義に備える子が、圧倒的だろう。

 新学期に新生活。
 最初はみんな、やる気があるものだ。

「はぁ……」

 僕にはもう、新生活はない。
 あんまりやる気も起こらない。

 日々はただ、ルーティンで過ぎていくだけ。

 ひとりでも講義を履修してくれる学生が増え、自分の書いたテキストが売れてほしいと願うだけ。

 仕方ない、仕事なんだから、これは……。

 書類をまとめて教室をあとにする。
 
 ちょっと早いけど、これから外でなにか食べるか……。

「先生」

 今日は、どの店にしようかな……。

「あのっ、畑中先生!」

 くいっ。
 袖を引かれる感触に、足を止めた。
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