僕が小説を書くように
 ん……?

 振り返ると、ひとりの女の子が立っていた。

 僕の袖をつかんだまま、ほてった顔をして、僕を見つめている。

 僕はしばし、女の子を観察した。

 染めていない肩までの黒髪に、透けるような白い肌。
 白いブラウスと流行りの、膝下丈のスカート。

 ちょっと、なんというか、着こなしがほかの子と比べて野暮ったい。

「畑中先生ですよね?」
「あ、そうだけど」

 僕を見る瞳が、思いがけず力強い。
 ちょっとだけ、見つめ合うかたちになる。

「あ、あの」

 女の子は、震える手で、僕に封筒を差し出して来た。

「こ、これ、読んでくださいっ!」

 言い捨てて、一気にダッシュして、去っていく女の子。

「あ、ちょっと!」

 呼び止めたかったが、声はもう届かない。

 僕は戸惑いながら、厚みのある封筒を抱えた。


 
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