僕が小説を書くように
「うん?」
 僕が振り返ると、うしろから幽霊のような男がのぞきこんできた。
 まだ若いのだろうけれど、なんとも不気味だ。

「畑中先生ですよね? 小説家の」

「ん、ああ、そうだけど」
 なんだ、僕のファンか。

「ぼく、先生の小説のファンでして」
 ほら、やっぱり。 

「ありがとう。サインならしますよ」
「そうじゃなくて、ぼくは……」

 男は、僕の耳元に口を寄せ、ささやいた。

「松島恵さんのことで、お話があるんです」
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