僕が小説を書くように
 そんな、破壊されたある日。
 見覚えのある背中が、駅へ向かっているのを見た。

 僕は、素早くあとをつけた。

 彼女は人混みに紛れ、階段をのぼり、ある私鉄の電車に乗りこんだ。
 僕もひとつあとの車両に乗った。

 どこにいくのだろう。
 誰と会うのだろう。

 熱病のようになっている頭をめぐらせながら、窓際に身を寄せる彼女を凝視する。

 彼女は小さなバッグをひとつ下げているだけだった。
 誰かのうちに泊まるというわけではないらしい。

 僕が知る彼女より、少し、痩せていた。
 それがかえって、綺麗だった。
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