僕が小説を書くように
 電車を二回乗り換えて、彼女は海に近い駅に降り立った。

 僕はあまり、自分の身を隠すことに心を砕かなくなっていた。
 ばれたらばれたでいい、そう思うようになった。

 彼女はときどき立ち止まり、スマホを見ていた。
 ナビを使っているらしい。

 知らない土地に来たのだ。
 ふるまいでわかる。

 僕は、この近辺をよく知っている。
 仕事で取材したことがあった。

 まだ肌寒く、太陽も陰っている。
 そんななかを僕は、彼女と同じ歩幅で進んだ。
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