ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
『婚約者、現れました』
「なぁ、花嫁修業がどういうことか……お前、ちゃんとわかってる?」

壁際に追いやられ、ジリジリと距離を縮められていく。

どうしてこんな状況に陥ってしまっているのか。誰か教えていただけませんでしょうか?


◆◆◆


朝の五時半。目覚まし時計をセットせずとも、必ずこの時間に目が覚めるようになり、どれくらい経つだろうか。

布団を畳み、顔を洗って着替えを済ませ、エプロンをつけてキッチンに立つ。

そして朝食の準備が整う頃、いつも通り朝のラジオ体操を終えたおじいちゃんが茶の間にやって来た。


「おはよう、おじいちゃん。朝の体操お疲れさま」

淹れたての熱いお茶をおじいちゃんの前に出す。

「おう、悪いな」

そしてそれをおじいちゃんは、いつも新聞を読みながら美味しそうに飲むんだ。


私、桐ケ谷 すみれ(きりがや すみれ)の一日は実に規則正しい。

それはこの育ての親でもある、おじいちゃんの影響かもしれない。


駆け落ち同然で結婚した両親とは私が二歳の時、事故で死別。その後、身寄りのない私は半年間施設で過ごし、お母さんの父親であるおじいちゃんに引き取られた。
< 1 / 251 >

この作品をシェア

pagetop