ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

『仲直りはとびっきり甘いキスをしましょう』

「五番線、間もなく列車がまいります。黄色い線の内側までお下がりください」

ホームに鳴り響くアナウンス。間もなく列車が到着すると、満員列車に乗り込んだ。


あの日から二日。ずっと彼とは顔を合わせていない。昨日の朝、起きると彼は既に出勤していていなかった。夜も私が眠るまで一度も帰ってこなくて、今朝起きると帰ってきた形跡がなくて。

私……本当に謙信くんに嫌われてしまったのかもしれない。

昨日から久しぶりに乗った満員列車に揺られながら、ひたすら目的の駅にたどり着くまで耐える。


幼い頃からずっとそばにいてくれて、しばらく会えなくても会えばいつもやさしくて。そんな彼に初めて向けられた冷たい視線。

瞼を閉じると鮮明に思い出せてしまう。

電話やメールをすればいい。同じ会社に勤めているのだから、会いにいけばいい。いくらでも彼と会って謝る機会はある。なのにそれができないのは怖いから。

なにより今のままの私では、謙信くんは見向きもしてくれないよ。私が変わらないと。