ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「謙信……くん？　ごめん、もしかして明日、なにか用事があった？」

不安になり聞くと、すぐに彼は表情を緩めた。

「いやなにもないよ。……わかったよ、じゃあ明日は俺も外で済ませてくる」

そう言うと彼は私から離れ、立ち上がった。

「先に風呂入るな」

「あ……うん」

そのまま浴室へと消えた彼に、首を傾げてしまう。

「やっぱり謙信くん、おかしいよね？」

私になんでも話せるような同性の友達ができることを、謙信くんも願ってくれていた。それなのになぜ？

点けっぱなしのテレビを見るものの、集中できない。

スキンシップの最中でも、沙穂さんの話をすると急によそよそしくなる。

もしかして謙信くん、私が毎日沙穂さんの話ばかりしているから、うんざりしているのかな？

そういえば私……いつも自分の話を聞いてもらってばかりで、謙信くんの話ってあまり聞いていない。

あれ……でも謙信くんっていつもそうだよね？　昔から自分のことはあまり語らず、常に聞き役に徹していた。
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