ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
おばさまを安心させたくて笑顔で言った。

言葉に嘘はないから。例え彼が私に抱く感情は、可愛い妹止まりだとしても私は違う。

心から謙信くんのことが好きだって胸を張って言えるから。

するとおばさまは安心したのか笑みを零した。

「よかった。すみれちゃんの気持ちを聞けて安心したわ」

そう言うと体勢を正し、私と向き合うおばさまは、いつになく真剣な面持ちを見せた。


「あの子は誰よりも家族に憧れを抱いていると思う。私たち親子に血の繋がりがない分、余計に憧れがあるんじゃないかしら。……愛する人と結婚し、自分の血を分けた子供との生活を」

おばさまの話に頭をよぎるのは、この前謙信くんが言っていた言葉。

『それに結婚したら、やっぱ子供欲しいし。……すみれだって欲しいだろ?』

『そんな未来のためにも、すみれ。……早く俺を好きになって』


あの時は私の反応を見て楽しんでいるだけで、本気じゃないのかもしれないと思っていたけれど……あれは、謙信くんの本心だったのかな?

そう思うと胸が苦しくなる。
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