ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
でも私、結婚や婚約の前に忘れていることがあった。……私、まだ謙信くんに一度も好きって伝えていない。

よく考えればおかしな話だよね。結婚したいほど好きなのに、その気持ちを伝えずにいるなんて。

謙信くんが私のことをどう思っていようが、私は彼のことが好きなんだ。

それをまず伝えないことには、彼に好きになってもらえるわけない。

自分が変わることばかり考えていたけれど、もっと大切なことがあった。

謙信くんが好きって感情をわからないと言うなら、私が教えてあげればいいんだ。

謙信くんを想う気持ちを伝えればいい。それが人を好きになるって感情だから。

幸せで苦しくなるほどの喜びを、彼にも知ってほしい。

それに気づけたのは、おばさまが話してくれたから。大切なことを忘れるところだった。


「おばさま、ありがとうございました!」

「あらやだ、なに急に」

急に感謝の気持ちを伝えた私に、おばさまは「フフッ」と笑った。

「ありがとうって伝えるのは私の方よ? ……謙信のこと、好きになってくれてありがとう」

「おばさま……」

それからふたりで、謙信くんたちが戻ってくるまでの間、いろいろな話で盛り上がった。

最後に「できればこれからは〝お義母さん〟って呼んでね」と言われて。

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