ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

謙信くんがどう思うか予測できないけれど、それでも知っていてほしい。

彼が私との結婚を望んでくれているなら余計に。

そろそろカップの珈琲もなくなる。

伝えたいけれど、いざ伝えるとなると心臓はバクバクと暴れ出す。……それでもやっぱり彼に伝えたい気持ちは変わらず大きくて、私は珈琲を飲み干し、カップをテーブルに置くと、謙信くんの方を向いた。


「あの……謙信くん」

「ん？　どうした？」

すると謙信くんもカップをテーブルに置き、顔を私に向けた。

視線がかち合い、ドキッとしてしつつも、すぐに自分を奮い立たせ、彼の瞳を捕らえた。

「謙信くん……この前言ってくれたこと、覚えている？」

「この前？」

「うん。……あの、子供のこと」

小声になってしまうも、しっかり彼の耳に届いたようで目を丸くさせた。

「あ、あぁ、覚えているけど……」

珍しく戸惑った様子を見せる謙信くん。ここで恥ずかしくて押し黙ってしまったら、言えなくなりそうだ。

恥ずかしさを感じる余裕もないほど早口で捲し立てていった。

「あのね、あの時は言えなかったんだけど、私もいつか謙信くんの赤ちゃんほしいって思っているから！」

大胆な発言に、謙信くんは瞬きもせず私を凝視してくる。