ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
そうだよね、絶句しちゃうよね。いつもの私だったら、絶対に言えないようなことを言ったのだから。

「もっ、もちろん冗談でも嘘でもないからね!! ……けれど、謙信くんとは違うから」

「えっ?」

変わらず私を見つめる彼。小さく深呼吸をし、想いをぶつけた。

「私は謙信くんのことが好きだから。……だから謙信くんと結婚したいし、謙信くんの赤ちゃんがほしい」

「……え、あっ……え?」

告白に彼は激しく動揺し、口元を手で覆った。

やっぱり謙信くんは私の気持ちに気づいていなかったんだ。そう思うと切なくなるけれど、それは今まで言葉にして伝えてこなかった自分のせい。

大切なのは今、そしてこれからだよね。


「私ね、小さい頃からずっと謙信くんが好きだったの。……謙信くんに彼女ができても、気持ちを消すことなんてできなかった。だから謙信くんに結婚しようって言ってもらえて嬉しかった。……謙信くんは私のことを好きじゃなくてもいい。そばにいられるだけで幸せだったから」

「すみれ……」

報われないと思っていた恋が意外な形で実を結び、私は浮かれていたのかもしれない。
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