ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
『好き？　嫉妬？　この感情は？』
瞼を閉じると、幼い頃の笑っているすみれが浮かぶ。

俺の名前を呼んで、いつも後を追ってくるすみれが可愛くてしかたなかった。

最初は同じ境遇のすみれが、どんな子なのか気になっただけだったのに、いつの間にか大切な存在になっていったんだ。

この先もずっとすみれのことは、俺が守っていきたいと――。

彼女に対する想いを、どんな言葉で表現すればいいだろうか。妹のような家族のような。

なのに愛しいと思えて、衝動的に抱きしめたくもなる。

大きくなればなるほど、結婚に興味がなくなり、したいと思えなかったのになぜか彼女とだけは、したいと思ったんだ。

すみれとこの先もずっといっしょにいられる。

紙切れ一枚の縛りだけれど、たったそれだけで未来が約束されるなら結婚したいと思った。

世の中には好きって感情だけで結婚する人ばかりではない。利益のため、私欲のため。

いろいろな理由を抱えて結婚している人たちもいる。

なら俺たちだっていいと思ったんだ。彼女もまた昔のトラウマを抱えているからこそ、そばで支えてやりたい。

昔からそうやって生きてきたからこそ、これがベストな選択だと思っていた。でも――。
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