ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

もしかしたら俺は、すみれのことが好きだからかもしれない。

幼なじみでも妹でも家族でもない。……ひとりの女性として惹かれている。

だからこそ彼女のちょっとした仕草や言動に、胸が苦しくなるのかもしれないと。

これが好きって感情ではないだろうか。……そう思えてならなかった。



だから初めて抱く感情に振り回され、大切なことに気づけずにいた。

昔から大切に守ってきた彼女を傷つけてしまった。


「婚約は解消してほしい。……謙信くんといっしょに暮らして花嫁修業なんてできない。……結婚なんて考えられないからっ」

この先、なにがあっても守りたい彼女を泣かせてしまったのは、すべて俺のせい。


こんなの優しさでも、なんでもなかったと思い知ったのは、彼女に婚約解消したいと言われ、俺の元から離れていく後ろ姿を見た時だった。