ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「どうなの？　専務は。あれから変化があったりする？」

「どうなんでしょう。……私は気持ちを伝えたことによって、少し距離が縮まった気がするのですが……」

以前にも増してふたりで過ごす時間が増えた気がする。

私がいろいろ聞いているからだけど、少しずつ謙信くんも自分のことを話してくれるようになったし。

「そっかそっか、それはよかった。しかし意外だなぁ、あんな完璧な人が好きって気持ちを知らないとか」

「……はい」

「でも私はすみれちゃんと結婚するって決断した時点で、専務は自分でも気づかないうちに、すみれちゃんのことを意識していると思うけどなぁ」

沙穂さんはいつもそう言って励ましてくれるけれど、素直に頷くことはできない。

それと同時にある疑問が浮かんでしまうんだ。


謙信くんはおじさまたちに、しつこく結婚しろって言われてうんざりしていたから。私となら結婚してもいいって思ったからだって言っていたけれど……。

本当にたったそれだけの理由で結婚を決めたのかなって。
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