ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
だってやっぱり結婚って一生に一度のことだし、人生を左右するような大きな決断だと思うから。

私を好きでもないのに、なぜ謙信くんは私との結婚を決めたのだろうか。

その思いは強くなるばかりだった。



「お疲れさまでした」

「お先に失礼します」

終業のベルが鳴ると、オフィス内は騒がしくなる。みんなキリがいいところで仕事を切り上げ、退社していく社員もいる中、私もパソコンを閉じ、帰り支度を始めた。

すると先に身支度を整えた沙穂さんが、バッグを手にやって来た。

「すみれちゃん、たしか今日帰りにスーパーに寄って帰るって言っていたよね?」

「はい」

バッグに貴重品を整えながら答える。

「ねぇ、私もいっしょに行ってもいい?」

「もちろんです」

「本当? よかった」

いつもひとりで行くことが多いから、沙穂さんがいっしょに行ってくれるなんて嬉しいな。

残っている先輩たちに挨拶をし、沙穂さんとオフィスを後にした。
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