ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「昨夜からずっと付き添ってくれておったんじゃ。……謙信からすべて聞いた。すみれに婚約を解消したいと言われたことも、謙信のすみれに対する想いも。どうせ謙信、お前さっきわしとすみれの話を聞いておったんだろう? だったらすみれの気持ちはわかったはずじゃ。……男らしくちゃんとしてこい」


おじいちゃんに言われ、謙信くんは首の後ろに触れた後、真っ直ぐ私を見据えた。

「すみれ。……ふたりで話をさせてもらえないか? 俺、すみれに伝えたいことがたくさんあるんだ」

「謙信くん……」

それは私もだ。私も謙信くんに伝えたいこと、聞きたいことがある。

「すみれ、行ってきなさい。……わしが起きたらふたりで報告に来い」

「……うん」

おじいちゃんに背中を押され、謙信くんとふたり病室を後にした。

ちゃんと自分の想いを伝えようと心に誓って。
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