ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「なぁ、すみれ……。人を好きになるって俺が感じた感情のことをいうんだろう? 幸せで楽しくて。時には負の感情も抱く。胸が苦しくなったり悲しくなったり。苛立つこともある。……それが好きって感情だと俺は思うけど違うか?」


違わない。……違わないよ。だって今の私は、嬉しくてしかたないのに胸が苦しくて、涙が溢れて止まらないのだから。

「そう、だよ。……それが好きって感情。嬉しいのに胸が苦しくて、幸せで泣けちゃうの」

見つめ返し伝えると、謙信くんは零れ落ちた涙を優しく拭ってくれた。

「愛しくてたまらなくて、相手の全部を自分のものにしたくなる。……それも好きって感情だろ?」

「……うん」

絡み合う視線にトクンと胸が鳴る。

「どんどん欲張りになるの。……もっと私のことを好きになってほしいって」

「できるなら、俺以外の男には指一本触れてほしくない。そんなわがままな独占欲も抱いてしまうんだ」

「好きだから私にだけは甘えてほしいと思うの。……私にだけ弱い一面も見せてほしい。どんな謙信くんだって私は好きだから」
< 243 / 251 >

この作品をシェア

pagetop