ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
『本日より、花嫁修業はじめました』
おじいちゃんの手術が終わり、退院の目途も立つほど回復してきた頃。一弥くんは留学先に戻ることになった。

「わざわざありがとうな、見送りに来てもらって。……嬉しいよ」

「ううん、そんな」

人で溢れる空港ロビー。そこで一弥くんは私を見てニッコリ微笑んだ後、心底嫌そうな顔をした。

「あんたがいなかったら、もっと嬉しかったんだけど」

一弥くんは声に棘を生やして言うと、じろりと私の隣にピタリと寄り添う謙信くんを睨んだ。


「そういうわけにはいかないだろ? 従兄弟とはいえ、すみれと他の男をふたりっきりにさせたくないからな」

負けじと笑顔で言う謙信くんに、ひとりハラハラしてしまう。

「それにしても驚いたよ。婚約解消したと思ったら、今は恋人関係とは」


「あぁ、すみれとはじっくり時間をかけてお互いのことを知っていきたいと思ったから。……変な虫が入る込める隙もないほど親密な関係になるためにもね」

「それはいい。でも重くなりすぎてすみれに振られないよう気をつけた方がいい。独占欲強い男は嫌われるぜ?」

「余計な心配ありがとう。大丈夫、俺の愛が重いのはすみれも知っているから」
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