ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

ただの幼なじみでしかない私は、今まで以上に彼に会えなくなる。

気軽に話せなくなるかもしれない。……それだけは、絶対に嫌だから。

それでもなかなか決心がつかなくて、恐る恐る謙信くんに尋ねた。

「謙信くんは……本当に私でいいの？」

すると彼は目を細めすぐに答えた。「すみれがいいんだ」って。

その一言が私の背中を押した。私がいいって言ってくれた謙信くんの気持ちをしんじてみようって。

ゆっくりと左手薬指にはめられていく指輪。

謙信くんは指輪に触れながら言った。

「これからよろしくな、婚約者として」

「……うん」


突然現れた婚約者。

この日の私の決断は決して間違いじゃなかったって信じたい。

目の前で愛しそうに私を見つめる、ずっと大好きだった彼の瞳を捕らえながら強く願った。