ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「あぁ。そろそろこの家も寿命じゃろ？」

そう言われて思い当たる節はいくつもある。古い日本家屋で床は軋む箇所がたくさんあるし、ドアを開けるとギィ……っと音がするところがある。

極めつけは渡り廊下で一ヵ所、雨漏りするところがあるのだ。


歴史ある家だと言えば聞こえはいいけれど、おじいちゃんの言う通りこの家はもう寿命なのかもしれない。だけど突然すぎない？

「いつから工事は始まるの？」

これから予定を組むのかな？　なんて思っていた私に、おじいちゃんは言いにくそうに言った。

「実は土曜日から工事を予定しておる」

「今週!?」

まさかの話にギョッとしてしまう。さらにおじいちゃんは驚くことを話していった。


「じいちゃんは弟子の家で世話になる予定だ。家が使えなくなるからの。弟子の家でしばらくは華道教室を開くつもりじゃ。だがさすがにふたりして世話になるわけにはいかん。だからすみれ、修繕工事が終わるまで謙信のところに世話になってくれ」

「――え」

咄嗟に謙信くんを見ると、彼はにっこり笑った。
< 32 / 251 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop