ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「そういうことだ、すみれ。いっしょに暮らそう」

いっしょに暮らそうって……嘘でしょ!?

まるでドラマや小説の世界の話のような、怒涛の急展開。

けれどこれはどうやら現実のようで、迎えた土曜日の午前中。私の部屋の荷物は引っ越し業者によって運び出されていた。


「どうじゃ、荷物の方は大方片づいたか?」

「うん、どうにか……」

玄関先で呆然と立ち尽くす私の隣に立ったおじいちゃん。

私は午前中に。おじいちゃんは午後に引っ越しをし、その後すぐに工事が入る予定になっている。


誕生日から今日まであっという間に過ぎていき、お互い引っ越しの準備や仕事、華道教室のことでなかなかゆっくり話す機会がなかったんだけど……。

「ねぇ、おじいちゃん……。私、本当に謙信くんといっしょに住まないとだめかな?」

「……なにを今さら」

うっ……。おじいちゃんの言うことはごもっともだ。引っ越し当日にこんなことを言い出したのだから。――でも。
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