ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

幼なじみじゃなかったら、違った？

「わかったら行くぞ」

「……うん」

手を繋いだまま足を進めていく。

他の人と結婚しちゃったら、謙信くんはもう私に優しくしてくれないかもしれない。

自然と彼の手を強く握りしめてしまった。

「すみれ、どうかした？」

「ううん、なんでもない」

すかさず聞いてきた謙信くんに、慌てて答える。

この手を離したくない。ずっと謙信くんの隣にいたい。だからこそ、頑張ろう。

それから謙信くんと共に部屋の確認をし、おじいちゃんに見送られ新居へと向かった。



「すみれ、そろそろキリがいいところで休憩しよう」

「はーい」

新居にやって来て引っ越し業者が帰って早二時間。一通り部屋の片づけも終わってきた。


謙信くんが探してくれた新居は、開発が進むタウンにある高層マンション。会社へのアクセスも地下鉄で二駅と近く、近隣には商業施設などもあり生活しやすい環境だ。


三十階建てのマンションの二十五階の角部屋から見える景色は壮観で、この景色を毎日見られるのかと思うと楽しみ。