ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

それに部屋は完全に別々で、３ＬＤＫのうちの八畳の部屋が私の部屋。家では布団だったけど、この部屋はすべてフローリング。既に謙信くんがベッドを用意してくれていた。ベッドだけじゃない。必要な家具も。

段ボールをまとめてリビングへ向かうと、キッチンで謙信くんが珈琲を淹れてくれていた。


「お疲れ。はい、すみれの分」

「ごめん、ありがとう」

謙信くんからカップを受け取り、ふたりでダイニングテーブルに向かい合って座り珈琲を啜るものの……。

あたり前だけど部屋には私と謙信くんしかおらず、とても静かで居心地が悪い。

なにより好きな人とひとつ屋根の下、向かい合って座っている現状に緊張してしまう。

コップを両手で持ち、ただひたすら珈琲を啜ること数分。


「さて、すみれ。いっしょに生活する上でいろいろと話そうか」

「え？」

すると謙信くんは眉尻を下げた。

「これから暮らしていくのに、いつまでもそんなに緊張されていたら寂しいから」

どうやら謙信くんには私のことなんて、お見通しのようだ。