ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「ごめんなさい」

つい謝ってしまうと、謙信くんは顔をしかめた。

「どうして謝る? これから慣れていけばいいだろ? ……まずはさ、発想の転換からしてみないか?」

そう言うと謙信くんは意気揚々と話し出しだ。


「俺たちは結婚を前提に付き合っているだろ? だから今回の同居はただ単に、すみれの家が修繕工事するから始めたわけじゃない。……住み込みで花嫁修業することになったって思ってほしい」

は、花嫁修業!?

慣れないワードにあわあわする私に、謙信くんはフッと笑みを零した。

「本当のことだろ? いずれすみれは俺の嫁になるんだから。その日のための修行だと思えばいい」

それはそうかもしれないけど! でもなんか面と向かって言われると恥ずかしい。

まともに謙信くんの顔が見られなくなり、視線を泳がせてしまう。

「少しずつでいいよ。俺たちのペースで夫婦になっていこう」

「謙信くん……」

彼を見れば、優しい眼差しで私を見つめる彼を視界が捕らえ、胸がトクン、トクンと音を立てた。
< 42 / 251 >

この作品をシェア

pagetop