ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

そんな彼に戸惑いを隠せない。だって私、こんな謙信くん……初めて見たから。

すると謙信くんは立ち上がり、戸惑う私の隣の席に腰掛けた。

む、無理無理！　近い近い!!

一気に縮まった距離にのけ反ってしまった私の背中に彼は素早く手を回すと、意地悪な顔で言った。


「俺の部屋、キングサイズのベッドだから、いつかいっしょに寝られるようになろうな」

「……っ!?」

瞬きすることも忘れ、口をパクパクさせてしまう。

それってつまり、そういうことですよね!?

かぁっと熱くなる顔。きっと私の顔……真っ赤に違いない。

まさか謙信くんにこんな一面があったなんて……！


そういえば謙信くん、プロポーズしてくれた時に言っていたよね。『俺たち、お互いのこと知っているつもりでも、知らないことも多いと思うんだ』って。

私が知らなかっただけで、謙信くんにはもっと他の一面があるのかもしれない。


私の背中に腕を回したままにっこり笑って私を眺める彼を目の前に、これから先の生活に一抹の不安を覚えてしまった。