魔法よ、解けてはくれないだろうか
夕陽の差す教室に降りた静寂の幕。

「……今日は、曇っています。月なんて見えませんよ」

冗談だと思われているな、と先生の笑顔から読み取る。

「それでも、永遠に青空は澄んでいます」

私も微笑み返す。悲しいけど、此れが現実だ。

昔好きだった本とは違う、理想とはかけ離れた現実。

「……それじゃあ、先生。また明日」

立ち上がった私に、先生は笑顔で返す。

「えぇ。気を付けて」

私の片想いの魔法は、解けない。
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