【短】見えない虹
「喉、大事にして。」
さっき買ったばかりの水滴のついたミネラルウォーターを差し出す
無言で受け取る君は少し疲れた顔してた
本当は君の才能に嫉妬してるなんて僕は言えない
とうに諦めたドラマーの夢を君は知らないから
強い風に雲は東に流されて西には青い空が広がっている
漏れた光が君の頬を照らした
「話聞いてくれてありがと。泣いたらちょっとスッキリしたや。」
立ち上がった君はいつも通りでありがとうと少し笑った
何も解決してないのにどこかスッキリした顔をする君に僕の胸は少し痛んだ
雨上がりの虹が僕には見えない
-fin-