春色に恋して
風が弱まり、なびいていたカーテンが元に戻ったとき。
これは運命だなって思った。
紅く実った果実がすとんと落ちるように、呆気ない恋の始まりだった。
斜め前にいる男の子。
もちろんその子も他の人と同様で委員長の話なんか筒抜けで。
でも、その子は違った。他の人たちと何か違うって思ったの。
校舎の周りに咲く桜の木。
彼はそれをずっと眺めていた。
斜め後ろから見る彼の眼差しはとても優しく見えた。
彼の淡い茶色の髪が春風で揺れる。
彼を見た途端、とても心地が良かった。
何にもしてないのに背中から羽が生えて飛んで行きそうだった。
そんなふわふわとした、感覚。