涙の、もっと奥のほう。
思った事を言ったまでだったけど、お母さんの表情は複雑そうだった。

「本当に…本当に会いたいと思わないの?」

お母さんは多分、私がお父さんと会う事を望んでる…そんな風に取れた。

自分が一時は愛した人を、自分の父親を自分の目で見てほしいのか。

それとも他に何かあるのか。

「お父さんに繋がるものが無いから?」

もう一つ問い掛けられた事に、はっとした。

確かに、何も無い。

お父さんの写真すら見た事がなかった事に気が付いた。

「私、お父さんの顔知らない。写真も見た事ない…」

何故か心がはやり立つ。
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