涙の、もっと奥のほう。

一夜…父親の虚像

お母さんは話し出した。

お父さんとお母さんが出会ったのは、お父さんが20歳、お母さんが18歳の時。

社内恋愛ってやつだった。

その頃からお父さんの女癖は悪くて、浮気は日常茶飯事。

「何をされてもやり返すタｲﾌﾟのお母さんだったから付き合いは続いたのだろうね。」

恥ずかしそうに笑いながらお母さんは言った。

お父さんは背が高くて、顔は文句なしの男前だったらしい。

「目は大きくて、鼻も高かったしね。」

私はお父さんの生き写しだと、お母さんも言う。

親子が似ているとか、そんな時限を超えた…生き写し。