涙の、もっと奥のほう。
そして私の誕生日、12月2日。

産声を上げた私を見て、お父さんは泣いたという。

生まれてきたのは自分にうりふたつの女の子。

「父親と母親の名前から名前をつけようって言い出したの、お父さんだったんだよ。どの字を取るかってのはお母さんが考えたんだけどね」

そして決まった、私の名前。

一緒に生活しだしてからは良い思い出はほとんど無いと言う。

姑との確執、私の子育て、段々開いていく夫婦の亀裂…そんな中でお父さんが時折見せる父親の顔は、優しくて繊細だった。

それだけが夫婦を繋ぐ糸だった。

でも、それすらも長くは続かない。
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