涙の、もっと奥のほう。
そして、私の『最期』に繋がる物語が幕を開ける。

「江奈!来たぞお!」

金曜日、スナックの仕事に入っていた私の所に和哉(かずや)が来た。

昔、ヤクザだった私のお客。

見た目は厳つくて付き合いにくそうだが、内面はとてもいい人。

私にとてもよくしてくれ、創との再婚の話も和哉だけが知っている。

「いらっしゃい。水割りでいい?」

カウンターの一番端に腰掛けて、いつものように煙草に火つけている。

気を使わずに話ができる和哉が飲みに来てくれると他の酔っ払いの相手をせずに済むあたりから、楽で仕方ない。

大袈裟に言えば、和哉から後光がさしている。
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