前世

私の名前は、吉村香織(よしむら かおり)。

都内の高校に通っている。

私はある日、不思議な夢をみた。

夢の中で目が覚めた私は、小さな部屋にいた。

不思議と怖いという感じはなかった。

何故なら、その部屋の中には、可愛らしいヌイグルミなどが沢山あったからだ。

それに、私はお姫様のような格好(かっこう)をしていた。

部屋を出ようと扉に手をかけた。

ガチャガチャ…

開かない…。

何度もドアノブを回しても開かない。

今度は、窓を開けようと窓辺の方へ向かった。

が…。

むなしくも窓も開かない。

完全に閉じ込められている。

でも、何故、こんな部屋に閉じ込められなきゃいけないのか。

すると、外からドアをノックする音が聞こえた。

トントン…。

『お嬢様。食事をお持ちいたしました。』

そう言って中に入ってきたのは、きれいなメイドさんだった。

私『あのっ…』

メイド『はい?何ですか、お嬢様?』

私『あの…どうして、中からドアを開けることができないんですか?』

メイド『…お嬢様が…あの方の元へ行けないように…です…』

私『あの方…?』

メイド『はい。お嬢様は、覚えていらっしゃらないのですね…』

私{当たり前じゃない!夢なんだものっ!}

メイド『では、少しお話しましょう』

話によると、私にはとても大切な人がいた。

その大切な人というのが、あの方だ。

名前は、カイト。

その人と結婚するはずだった。

だが、身分の違いで結婚する事は許されなかった。

代わりに、親が勝手に違う人とお見合いをさせ、その人と婚約(こんやく)までさせた。

それがたえられなく、苦痛になった私は自殺を試みたと言う。

私『私…全然、分からない…。ねぇ、そのカイトって人の写真はないの?』

メイド『それなら…お嬢様が自分の机の引き出しにしまったはずですよ』

私『そう…だっけ…。ありがとう』

メイド『いいえ。それでは、私はこれで失礼いたします』

お辞儀をして部屋を出て行った。

私は、早速、机の引き出しを開けて写真を探した。

見つけた。

この人が…カイト…。

とても、格好いい人だった。

これが私の大切な王子様…。

こんな人と結婚できないなんて…。

しばらく、写真をじっと見つめていた。
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