前世
私はひたすら走った。
無我夢中で走った。
一緒に居るには、周りから逃げないといけない。
だって、私達は、結ばれてはいけないのだから。
それでも、大好きだから…
それでも、一緒に居たかったから…
カイトが居てくれるなら、周りから逃げる事だって平気だった。
でも…
もう、疲れた。
逃げる事に疲れた。
逃げたって捕まってしまえば終わり。
結局、一緒に居られない。
だったら、最初から一緒に居なければいい。
そう思った。
カイトの事が嫌いな訳じゃない。
大好きだもの。
だからこそ、一緒に居る為に逃げるのが辛かった。
怖かった。
しばらく走ると、いつの間にか知らない場所へ辿り着いていた。
辺りはとても真っ暗。
香織『あれ…?私、いつの間にこんな遠くまで…』
すると、近くで声がした。
『見つけたぞ!捕まえろーっ!』
香織『!?』
このままだと捕まってしまう。
早く逃げなきゃ!
『逃がすものかーっ!』
すぐ後から声が響き渡る。
私は夢中で走り続けた。
ところが…。
香織『キャッ』
石に躓(つまず)いて転んでしまった。
起き上がり、立とうとするが、立てない。
足をくじいてしまい、動けない。
足音が近づいてくる。
もう、ダメだ。
『さぁ、もう逃げられないぞ』
その時だった。
いきなり、私の目の前で倒れてしまった。
よく見ると、赤い血が広がっていた。
香織『えっ…』
私は何もしてない。
なのに、何で血が…?
カイト『俺が守るって約束した。ずっと一緒に居るって約束した。だから…』
カイトの手には、鋭い刃物が…
そして、それは、赤く染まっていた。
香織『どうして…?どうして、こんな事までして…(泣)私はこんなの…望んでないっ(泣)!』
カイト『…ゴメン…でも、こうするしかなかった…。こうでもしなければ、一生、逃げ回るしかないから…。それに、アリスと一緒に居られなくなるのが嫌だったから…』
香織『うぅ…(泣)私のせいなのね…(泣)』
カイト『違う。アリスのせいじゃない!これは、俺がやった事なんだ!』
香織『私のせいで、カイトが殺めてしまった…(泣)私のせいで…(泣)うぅ…(泣)』
カイト『だから、それはっ!』
香織『ゴメンね…カイト…(泣)もう、そんな事しなくていいよ…(半泣)』
カイト『アリス…?』
香織『私ね…カイトの事、本当に大好きだった…。今まで一緒に居てくれてありがとう…さよなら…』
私は、カイトが持っていた刃物を取り上げ、自分を刺した。
カイト『あ…アリス…?!アリスーっ』
耳元で聞こえたカイトの声。
ねぇ、カイト…。
今まで一緒に居てくれてありがとう…。
大好きだょ。
目の前が真っ暗になった。
これで、良かった。
これでもう、カイトは誰も傷つけないですむ。
これで良かったんだ…